書評 book review 「たたら」 2007 5 27

書 名 水素吸蔵合金のおはなし
著 者 大西 敬三
出版社 日本規格協会

 工事現場から、たまたま偶然、
古代日本の「たたら」遺跡が発見されたと聞くと、
つい、思いは、古代史への旅へと・・・・・。
 そんな大昔からあった製鉄。
だから、製鉄技術(製鋼技術)なんて、たいした技術ではないと思ってしまうのは、
文科系の人でしょう(少なくとも生産技術に疎い)。
 この本によると、第2次世界大戦前は、
戦艦の大砲を作る技術は、その時代を代表する技術だったそうです。
 その砲身に、鋭い亀裂が発見されるのです。
この亀裂は、鋼の中に進入した水素によって生じたものだったことが、
熱心な研究により、わかったのです。
 この発見により、鉄鋼の水素系欠陥(水素に起因する割れ)の防止に関する
研究が活発に進められたそうです。
 戦後、世界中の研究者が、「水素原子が鉄の中をどのように動くか」を、
競って、研究したとあります。
 鉄や鉄鋼にとって敵とは、一般の人は、錆び(さび)を連想するでしょうが、
技術者は、水素を連想する時代だったのです。
 フランスの研究者バスチェンが発表した論文が、
鉄鋼の水素脆性の研究ばかりでなく、
水素吸蔵合金の研究にも活用される原点になったそうです。
 さて、現代においては、水素吸蔵合金を使ったアクチュエータの利用方法として、
昇降装置付き車いすが、研究開発の対象となっているそうです。
 車いすの座面は、上下に動くことはないので、
車いす利用者は、高いところに手が届かないものです(たとえば、本屋など)。
 そこで、水素吸蔵合金アクチュエータが動力源として考えられたわけです。
このアクチュエータは、小さいながらも大きなパワーが出ることが特長です。
欠点は、反応速度が遅い(つまり、動きが遅い)。
 しかしながら、この欠点がプラスとなるとあります。
身体障害者が利用する「車いすの座面」は、ゆっくり上昇(下降)してこそ、
安心感があるのです。
 この本で、水素吸蔵合金の基礎的なことが学べると思います。
あるいは、水素と金属の関係とも言えるでしょうか。
 さて、今後は、水素と生命の関係について記述した本が出版されるかもしれないと、
大いに期待しています。















































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