何も解決しない 2008 10 12

 世界は、今回の経済危機で、こう思っているでしょう。
中央銀行が、流動性を供給すれば、事態は解決する。
あるいは、中央銀行が、利下げをすれば、事態は解決する。
もしくは、政府が、銀行に公的資金を注入すれば、事態は解決する。
 このように考えている人は、時代遅れになっています。
確かに、昔の経済は、上記の対策で解決したのです。
 しかし、21世紀型の金融経済は、それでは、解決しないのです。
医療で言えば、大怪我をした人に輸血して時間を稼いでいるようなものです。
 昔と今では、何が違うのか。
それは、デリバティブの存在です。
現在、デリバティブの総額は、600兆ドル、日本円で6京円です。
デリバティブ投資に対する野放図な放任によって、
このような数字になってしまったのです。
この10%でも毀損したら、60兆ドル、日本円で6000兆円です。
世界のすべての政府が資金を提供しても、この金額は無理です。
 もちろん、上記の計算は、極端な例でしょうが、
最近、有名になりつつあるCDS問題があります。
 現在は、サブプライム問題ではなく、CDS問題になったと言うべきでしょう。
つまり、今は、サブプライム危機ではなく、CDS危機と言った方が正確です。
 アメリカのITバブル崩壊時には、CDS市場はなかったのです。
だから、ITバブル崩壊後の教訓は、今は、役に立たないのです。
当然のことながら、日本のバブル崩壊後の教訓も、役に立たないのです。
 「日本経済を襲うエキゾチック金融危機」(草野 豊己著 毎日新聞社)から、
もう一度、引用しましょう。
(以下、引用)
一般に言われる「サブプライムローン問題」の本質は、「CDS危機」だと言える。
 世界最大の債券ファンドを運用する米ピムコのビル・グロス氏は、
景気後退によって、企業のデフォルト率が現在の0.5%前後から、
通常レベルとされる1.25%に戻れば、
ヘッジファンドなどのCDS保証引き受け側には、
約5000億ドル(50兆円)の支払い義務が生じると指摘。
 さらに、そのヘッジファンドが破綻すれば、
CDSで保証を受けている金融機関は、
保証引き受け側から取っている担保では補えない、
残り半分の2500億ドルの損失を被ると試算している。
 80年代の米S&L危機、00年のITバブル崩壊時に、
世界のデフォルト率は、4%に上がったが、当時、CDS市場は存在しなかった。
 仮にデフォルト率が今後4%に上昇すれば、
62兆ドルの4%に当たる2兆5000億ドル(250兆円)がデフォルトすることになる。
(以上、引用)
 著者によれば、
クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が62兆ドルで、
これでも、気が遠くなる数字なのに、
金融派生商品の総額は、600兆ドルだという。
 兆の次の単位は、「京」だったでしょうか。
そうすると、6京円でしょうか。
こうなると、CDSバブルの崩壊だけで終わってほしいと思いたくなります。
仮に、そうだとしても、人類は、初めて、スーパー・バブルの崩壊を体験することになります。

















































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