本 book  2003 5 29

 今は昔、ある民族に、ひとつの本が伝わっていました。
しかし、それは記号のようなもので書かれており、
誰も読むことができませんでした。
 しかし、ある時、旅人が、その民族を訪れました。
その旅人は、不思議なことに、暗号を読むことができました。
そして、その本に何が書かれているか、すぐわかりました。
内容が、すばらしかったので、旅人は、
その暗号を読む方法をその民族に教えました。
しかし、その方法は難しく、一部の人しか習得できませんでした。
そこで、その人たちが、広場に多くの人たちを集めて、話をしていました。
そういう新しい職業ができたのです。
しかし、ある時、ある人が、その暗号書を誰にでも、わかる言葉に直したのです。
これには、多くの反対がありました。
なぜなら、その暗号書は、それ自体で、意味を持っていたのです。
それを字として見れば不明ですが、絵として眺めれば美しかったのです。
さらに意味がわからなくても、暗号書を読める人が音として発音すれば、
美しい響きとなったのです。
それを世俗的な民族の言葉に直すのには、多くの反対がでました。
しかし、その人は、暗号書のすべてを民族の言葉に翻訳しました。
これで、すべての人が、その本を読むことができるようになりました。
そして、その本に基づいて、多くの文化ができてきました。
しかし、すべての人がその本を読めるようになったので、
みんなが勝手に、自分の都合のよいように本を解釈し始め、
これが混乱の始まりとなりました。
最初は、ひとつだったものが、無数に分かれてしまったのです。
そのため、この混乱を収めるため、
強力な指導者が、ひとつの考えのもとに、まとめてしまったのです。
混乱は一時的には収まりましたが、
今まで自由を満喫していた人たちは、不満を感じて、
この強力な指導者に抵抗を始めたのです。
これが、またの混乱の始まりでした。
この間違いは、
すべての事柄にわたって、すべてを統一しようとしたことが誤りだったのです。
物事には、中心となる部分があり、
その中心を取り巻くように、多くの物事があるのです。
要するのに、中心部分のみ統一し、
残りの部分は、それぞれ、みんなに任せればよかったのです。
本には、人類の二千年の歴史が書かれていました。
この本に書かれていることを上映すれば、二千年かかりますが、
読書能力があれば、二千年を二時間で読むことができます。
人間には、読書という能力が与えられました。
しかし、この優れた能力を捨てる人が多い。
活用する人は、さらに少ない。
そうであるならば、ふたたび、暗号書の時代に戻るかもしれない。
招かれる人は多いが、選ばれる人は少ない。

News past and future へ戻る

トップページへ戻る

vintage へ戻る