銀行 bank 2003 6 7

 「銀行とは何か」という本質的な問題を考える時期ではないでしょうか。
銀行とは、サービス産業である。
 今までのイメージでは、国民からお金を集めて、
そのお金で、企業に融資をして、収益を上げてきました。
そして、その収益の一部を利子という形で、国民に還元してきました。
そういう時代がありました。殿様商売の時代でしょうか。
 しかし、時代は変わりました。
時代は、規制によって守られた市場から、
規制の少ない市場へと変わりつつあります。
規制によって守られている産業は変革を求められています。
金融業界も例外ではありません。
もちろん、電波行政によって守られている電波産業も該当します。
 規制の緩和というと、まず預金金利の自由化の問題があります。
預金金利は、実質的には管理されているようです。
預金金利が、どの銀行でも同じならば、
何種類も銀行は必要ありません。
郵便局のような金融機関がひとつあれば、足ります。
この預金金利を完全に自由化にするか、しないかは、
議論が尽きない問題でしょう。
完全に自由化してしまうと、結局、
資本力の強い銀行が勝ち、弱いものは淘汰されてしまいます。
そうなってから、独占禁止法で抑えても、
市場は不自然な形に歪んでしまいます。
 ここでは、とりあえず、預金金利は、
どの銀行でも一定と仮定して、話を進めます。
 預金金利が全国一律、同じならば、国民はどうするか。
たとえば、ガソリンが全国一律で同じ価格だったら、
国民はどうするか。
まず、家から近いガソリンスタンドを選択する。
距離の選択が起きる。
次にサービスのよいガソリンスタンドを選択する。
もちろん、いくらサービスがよくても、
家から遠いガソリンスタンドは選択しない。
距離とサービスの選択が起きる。
 しかしながら、預金金利を実質的に全国一律、同じにするという救済策があっても、
銀行には、また難問がやってくる。
お金の貸出先に困ってくる。
実力のある大企業は、自分で資金調達ができる。
有望な中小企業は、投資家の援助が得られる。
そうすると残った企業に融資することになる。
しかし、不良債権になる恐れがあり、融資には躊躇する。
また、株式市場にはリスクがあり、これにも躊躇する。
そこで、債券市場という救済策がでてきたかもしれない。
それで、債券市場で、当面、収益を上げているように見える。
しかしながら、これは、本来の銀行の姿ではない。
しかも、この救済策は、いつまでも、続けられるものではない。
 さて、入り口でも出口でも、道がどこも、ふさがれているように思える。
そこで、個人向けの不動産担保融資に活路を見出すが、
これも、デフレが何年も続けば、不良債権化する恐れもある。
そこで、個人向けの無担保融資に活路を見出すが、
しかし、これも消費者金融業者と競合する。
 さて、どうすれば生き延びることができるか。
こういう問題をみんなで考えていく必要がある。
銀行が破綻すれば、日常生活において、
実際に困るのは、国民だからである。
だから、銀行の苦境を対岸の火事のごとく、
眺めている場合ではない。
政府がなんとかしてくれると思ってはいけない。
改革したい人たちと、現状維持したい人たちの間で、綱引きになっている。
 しかし、何もしなければ、銀行は座して死ぬことになる。
そこで、国民が提案していくことが必要である。
提案手段は、今の時代は、いくらでもあります。
それぞれが得意な方法で、提案すればよい。
 銀行とは、サービス産業である。
これからの時代は、総合サービス産業に変身する必要がある。
 たとえば、自動車を買うと、ローンを組むことが多いが、
どの車を買えばよいか、そういうことで困る人もいるはずです。
車のディーラーは、自社の車については、悪く言うことはない。
また、車の雑誌にしても、スポンサーの関係で、
新車について、悪い情報は書きにくい。
結局、いい情報ばかりで、消費者は、なんとなく決めている。
しかし、客観的な車の目利きは、誰がやるか。車も資産の一種です。
車のローンと車の目利きをセットで行うサービスも必要でしょう。
 家を買うとき、ローンを組むことが多いが、
どの家を買うか、そういう問題で迷うことになる。
不動産業者は、自分の不動産について、悪く言うことはない。
また、不動産の雑誌にしても、スポンサーの関係で、
不動産の悪い情報は書きにくい。
結局、いい情報ばかりで、消費者は、なんとなく決めている。
客観的な不動産の目利きは、誰がやるか。
不動産のローンと不動産の目利きをセットで行うサービスも必要です。
 人間も年を取ると、若いときのように、うまく資産管理ができない。
しかも、加齢により、少し痴呆がでてきたとなると、さらに困難になる。
高齢者資産管理サービスも必要でしょう。
 さて、人生の最後に困るのが、遺産相続の問題です。
平均年齢を超えた人に対し、遺産相続の相談、
依頼者が死亡した時の遺産相続の進行管理、
そういう遺産相続総合サービスも必要でしょう。
 以上、実現は困難でしょうが、いろいろな情報が集まるのも銀行です。
せっかく、集まった情報を何とか有効活用する必要があります。
金融業+情報産業=総合サービス産業(銀行)
こういう銀行ができれば、銀行に対しサービス料を払ってもよいでしょう。
顧問弁護士というものがあるが、
顧問銀行というものができれば、
顧問銀行に対して、顧問料を払ってもよいでしょう。
お金に関することならば、付随するものまで含めて、
すべてのサービスを提供する銀行、
そういう顧問銀行があってもよいでしょう。
お金のコンシェルジェ(concierge service)を銀行が行う。
「コンシェルジェ」とは、「案内人」のことです。
 さて、いずれにせよ、とりあえず、債券高・株高政策を推進するしかないでしょう。
気のせいか、
アメリカでは、債権高・株高政策を推進しているようにも見えます。
 ところで、世界の銀貨を調べていたら、
仏教を開いた仏陀の肖像が描かれた銀貨がありました。
LORD BUDDHA と記されていました。
しかし、イエスキリストの銀貨はありませんでした。
これには、深く、大きな問題があるでしょうが、
仏陀の銀貨が、仏陀への信仰心を表現していますので、
イエスキリストへの信仰心を表現する銀貨があってもよいと思います。