オプション 2008 9 27

 金融商品における「オプション」は、
一般の人にとっては、わかりにくい概念でしょうが、
現在、起きている金融危機を理解する上で、ぜひとも必要な知識です。
(わかりにくいと思ったら、丸暗記してもよいでしょう)
 「オプションの買い手」は、損失は限定で、利益は無限大、
「オプションの売り手」は、利益は限定で、損失は無限大となります。
 こう書くと、一般の人は、
「オプションの売り手は、損ではないか。
『利益は限定で、損失は無限大』では、割に合わない」と思うでしょう。
 しかし、基本的に、「オプションの売り」は、儲かります。
ただし、これには、条件があります。
平時ならば、つまり何事もなければ、「オプションの売り」は、必ず儲かります。
これほど、おいしい商売はないのです。
 これは、損害保険で考えればわかりやすいでしょう。
自動車保険の売り手(オプションの売り手)は、
事故が全く起きなければ、丸儲けでしょう。
毎月、保険料が入金されますので、これほど、おいしい商売はないでしょう。
だから、保険会社は、高額な広告料を払っても、保険加入者を数多く募集するのです。
 このように保険商品を大量に販売すると、
万が一、事故が多発した場合、保険会社は倒産の危機となるでしょう。
(「利益は限定で、損失は無限大」という法則によって)
 しかし、事故が多発する可能性は、数学的な確率で考えれば、
数万分の一、あるいは数百万分の一でしょう。
そういうわけで、保険商品を大量販売しても安心です。
 人間というものは、平時が長く続くと、
「永遠に平時が続くもの」と勘違いしてしまいます。
 そう勘違いした時に、「オプションの売り」という商売は、
極めて魅力的な商売に見えてしまうものです。
 しかも、CDSという「新手の市場」には、全く規制というものがなかったので、
その魅力は、極めて高いものとなりました。
こうして、みんなが殺到した結果、CDSバブルという「新種のバブル」が発生したのです。
 現在の金融危機は、決して「流動性の問題」ではありません。
「支払い能力の問題」です。
 だから、中央銀行が金融市場に資金を大量供給しても何も解決しません。
医療で言えば、輸血をしているようなものです。
輸血だけで病気や怪我は治りません。

CDSという保険 2008 9 20
 以前は、CDS(Credit default swap)というと、
金融業界の関係者しか知らない業界用語でしたが、
最近は、一般の人にも、その用語は知られるようになりました。
 しかし、いまいち意味がわかりにくいと思います。
そこで、たとえ話をします。
 生命保険という金融商品があります。
これは、個人から見れば、将来の怪我や病気に備えて、
一定の保険料(プレミアム)を払って、
将来の安心を買うようなものでしょう(オプションの買い)。
 保険会社から見れば、
みんな元気で健康ならば、丸儲けでしょう。
毎月、保険料が入ってくるのですから、
これほど、おいしい商売はないでしょう(オプションの売り)。
 それでは、あなたも保険業を始めますか。
きっと儲かることは間違いないでしょう。
 それでも、あなたは、
保険業(オプションの売り)を始めることはできないでしょう。
 なぜならば、万が一、生命保険の加入者が病気で死亡すると、
数千万円の保険金の支払いが発生するからです。
 つまり、こうした商売(保険業)は、
資金力がないとできない商売です。
 もちろん、資金力がある保険会社でも、
想定外の事態が発生すると、倒産の危機になるかもしれません。
たとえば、未知の病気で、生命保険の加入者が次々と死亡し、
その数が百人単位となると危機的状況になるでしょう。
 このように、オプションの売り(生命保険の販売)は、
平時は、必ず儲かる魅力的な商売ですが、
有事は、大変なことになってしまいます。
 しかし、人間というものは、平時が長く続くと、
有事が起こるとは考えなくなってしまいます。
「永遠に平時が続く」と思ってしまうものです。
 そう錯覚した時に、
オプションの売り(保険業)は、極めて魅力的な商売に見えてしまうのです。
だから、誰もが簡単に儲かる「オプションの売り」という商売に参入するのです。
 しかし、万が一、有事が起きたら、大変なことになります。
たとえば、サブプライム危機のような有事です。
 さて、前置きが長くなりましたが、
A金融会社が、B住宅販売会社に、100億円を融資したとします。
B住宅販売会社は、急成長した業者で、今後も、うまく成長するように思えて、
魅力的な融資先と考えました。
 しかし、A金融会社は、不安です。
100億円という金額が巨額なこともあるでしょうが、
いくら急成長した業者でも、風向きが変わると(病気になると)、
どうなるか、わからないでしょう。
 そう思うと、A金融会社は、なおさら不安です。
将来のB住宅販売会社の倒産(怪我や病気)に備えて、保険に入りたくなるでしょう。
そこで、保険料(プレミアム)を払って、CDSという新手の保険に入りました。
 しかし、A金融会社の心配は、杞憂に終わりました。
空前の不動産景気で、貸した金は、無事に戻ってきました。
A金融会社は、CDSという保険料を支払った分だけ損をしましたが、
やはり、空前の好景気で、保険料も、かなり安かったのです。
 CDSの売り手も、保険料は安いですが、
薄利多売で、確実に儲かるわけですから、
誰もが、CDS保険業に参入したわけです。
 好景気が続いている限り、
A金融会社も、B住宅販売会社も、CDSの売り手も、みんなハッピー(happy)だったのです。
今風に言えば、ウィン・ウィンの関係だったのです。
 実は、CDS保険業というか、CDS金融商品は、
さらに進化(?)しているのです。
以上の説明では、昔からある民法の債務保証に近いかもしれません。
しかし、CDSでは、全くの第三者でも、CDSの「買い手」や「売り手」になることができるのです。
これは、話が複雑になるので省略します。



















































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